サマリー
老後や介護に向けて資産づくりの大切さをお伝えしている筆者ですが、いざ自身の老後を想像したときに、うまくイメージできずに不安を感じることもあります。それは「人生の終盤をどこで、どう過ごすか」ということ。皆さんはいかがでしょうか。
周りの高齢者を見ていると、早いうちから前向きに資産づくりに取り組んでおくことで、人生の終盤期になったときに自分が望む過ごし方を選択しやすくなるように思います。
この記事では、筆者が普段身近に接している高齢フランス人マダム達の暮らし方とともに、彼女達から学んだ老後に向けた資産づくりについて紹介します。
ご近所のマダム達の暮らし方
筆者のお向かいとそのお隣さん、そして筆者のお隣さんは、皆さんそろってすでに配偶者を亡くし、長年にわたり一人で生活をされている高齢フランス人マダム達です。筆者が今の住居で暮らしはじめて20年が経ちますが、この20年間で彼女達の様子も変わってきており、必然的に自分の将来像をイメージすることがあります。
マダムA、82歳
3人のなかでもっとも若いAさんは、約10年前に配偶者を亡くされました。お子さんは遠方にいるため見かけることは少ないですが、学校の長期休暇のときにお孫さんが遊びに来ることがあります。
とても82歳という年齢に見えないほど身だしなみもきちんとしており、毎日ウォーキングや庭仕事を楽しまれている様子。未亡人になってからは、数年ごとに人は変わっていますが、男友達も訪ねてきているようです。
マダムB、87歳
私たちが引っ越してきたときにはBさんには、通い婚状態の高齢男性がいました。ともに早くに配偶者を亡くされたお二人は、再婚ではないものの、毎日男性がBさんのお宅に通い、一日のほとんどの時間を一緒に過ごす共同生活を選ばれたそうです。コロナ禍で通えなくなった男性は、そのあと亡くなったとお聞きしました。それからの数年間、人との交流はほとんど見られないものの、毎朝の玄関掃除と、徒歩でその日の分の買い物をするルーティンは変わらず続いています。
一方、立ったときの姿勢と歩き方に年々「老い」が進んでいる様子がうかがわれ心配していたところ、住居を売却して大都市で暮らす息子さんの近くの施設に入る予定と教えてくれました。売却に出してまだ1か月程度ですが、まだ買い手はついておらず、そのまま一人で生活されている様子です。
マダムC、96歳
Cさんも早くに配偶者を亡くされ、私たちが引っ越してきたときから一人暮らしをされています。90歳を過ぎる頃まで毎朝の散歩やジム通いをするなど足腰もしっかりされており、年齢をお聞きしたときにびっくりしました。
近くに住んでいる娘さんとは不仲で、たまに訪ねてきてもお互い言い争う言葉が聞こえてきます。そのため、庭木の剪定や電球の取り替えなど、仲のいいご近所さんがなにかとサポートしています。昨年頃からは訪問介護士が訪れ、日中生活のお世話をし、散歩も介護士が連れ添っています。
先日の早朝、Cさんのご自宅前に救急車が止まっているのを見たときは心配しましたが、寝室でつまづき床に倒れたまま起き上がれなくなり、念のために救急車を呼んだとのことでした。その後もこれまで通り、介助やご近所さんのサポートを受けながら一人で生活されています。
フランス高齢者の居住・サービス事情
高齢化の進行と対策は、フランスでも社会の課題の一つとなっています。「人生の最期を穏やかに過ごせるアルツハイマー村の暮らしとは」の記事でも紹介しているように、近年は高齢者向け居住施設やサービスも多様化してきています。いくつか代表的なものを紹介しましょう。
高齢者住居施設
高齢者用の住居施設は公営・民営があり、どちらも大きく分けると次の2つのタイプがあります。
● 集合住宅タイプ:マンションやアパートのように個々の世帯が独立した集合住宅。
● 共同住居タイプ:1つの共同住居に各自が自分の部屋を有し、食堂や娯楽ルームなどを共有する施設。
それぞれのタイプで、医療や介助・介護体制の有無の異なる施設があり、入居対象者が、自立型・半自立型・非自立型(要介護型)と分かれていきます。
在宅型サービス
公・民のサポートを受けながら自宅で生活する取り組みも提供されています。
● 自宅への訪問による生活支援サービス:介護士による訪問介護、食事配達、買い物付添いなどのサービスがあります。
● 世代間交流住宅:例えば高齢者の自宅に学生が住み込むなど、いわゆるホームステイの形態。高齢者からは住居提供、住み込む人からは見守りなど、お互いにサポートしあって生活する方法です。
人生の終盤に大切なのは「つながり」と「資金」
フランスの高齢者向け施設やサービスの価格は、日本同様に、地域や運営者、施設の種類によって幅広く設定されています。また、同じ施設であってもサポートの度合い(要介護度)や入居者世帯の所得などさまざまな条件で異なります。
一例として筆者の居住市にある高齢者施設(老人ホーム)のうち、政府の公式サイトで料金検索ができる施設から3施設の料金を調べてみました。[注1]
| 施設 | 運営体 | 月額料金(※) |
| A | 公営(病院内施設) | 2184.3ユーロ |
| B | 民営(非営利団体) | 2459.1ユーロ |
| C | 民営(営利企業) | 3097.2ユーロ |
※個室料金、食事、洗濯、娯楽サービス、介助なども含まれるが、介護の必要性や要介護度、世帯所得に応じて変動あり。
[注1]フランス政府公式サイト「pour les personne agées. gouv.fr」
所得によっては公的年金とは別に社会福祉手当の支給や税金控除などを受けられますが、老後を施設で過ごす場合は「三度のメシよりバカンス好き?! フランス人に習う旅行費用の作り方と抑え方」の記事で紹介したフランス人の平均給与額を超えてしまうケースも考えられます。
人生の終盤を、どこでどう過ごしたいかは人それぞれです。しかし、冒頭で紹介した3人のマダムの過ごし方を見ていると、その選択にはお金と人(家族・友人・知人・近所・社会の人々)という資産が必要なのではないかという気がします。逆に言うと、金銭的・人的資産を築いておくことで、人生の終盤期に入ったときに、多数の選択肢から自分が望む過ごし方を選べるのではないでしょうか。
今から「人的・金銭的」資産を積み上げていこう
死後整理や家族に対する財産状況の伝達というイメージのある終活ですが、望むような人生の終盤期を過ごせるように、人とのつながりや資金を築くことも終活の一つかもしれません。
そうであれば、一朝一夕にはできない「人的・金銭的」資産の構築は、年齢にかかわらず、思い立った時点で早めに取りかかるとよいでしょう。まずはライフプランの作成・見直しや積立投資などから取り組んでみてはいかがでしょうか。