財務省からバカンス関連の内容のメルマガが届いたり、あいさつもバカンスの行き先を尋ねる内容になったりと、フランスではすっかり夏のバカンスムードになっています。毎年のように長期の旅行に出かける人も多いフランスですが、物価高による家計負担の重圧もある中で、費用をどう工面しているのかが気になる方も多いでしょう。 

そこで、フランス人のバカンス事情や旅行費用の作り方などについて調べてみました。夏休みはどこかへ出かけたい気持ちもあるけど、費用もかかるし、家でゆっくり映画でも……などと考えられている方は、この記事で紹介するフランス人の旅行費用準備の工夫を参考にしてはいかがでしょうか。

夏のバカンスはフランス人にとって当たり前?!

ある金融関連企業が実施した、フランス人のバカンス予算に関する調査結果によると、今夏(2025年・夏)バカンスに出かけると回答した人は55%。 過去の調査でもコロナ禍の2020年(44%)を除き、過半数の人が夏のバカンスに出かける予定だったことが分かります。[注1]

「Q:今夏、バカンスに出かける予定ですか?」の質問に 「はい」と答えた人の推移

さて、今年の調査結果に戻りましょう。「出かける」と回答した55%の人たちに出かける期間を質問した結果は以下のとおりです。[注1]

  • 1位:1週間(40%)
  • 2位:2週間(33%)
  • 3位:3週間(10%)
  • 4位:3週間超(9%)
  • 5位:1週間未満(8%)

最も多い回答は「1週間」ですが、全体的には過半数の人が2週間以上出かけるとの回答です。

日本では、会社が定めた数日間の夏季休暇だけ仕事を休む、もしくはその前後に有給休暇を使って休暇を延ばすという方が多いでしょう。しかし、フランスでは1ヵ月働くごとに2.5日分の有給休暇の権利を得られるため、就労2年目からは年間5週間の有給休暇を取得できるようになります。

また有給休暇の消化については、原則として夏季期間(5月1日~10月31日)に、最低2週間は連続で取得しなければならないことになっています。多くのフランス人が長期バカンスに出かけられるのは、こういった有給休暇に関する法律の後押しもあるのでしょう。

[注1]opinionway pour Sofinscope「Entre envies d’évasion et réalité du portefeuille : La fin des traditionnelles vacances d’été ?」p.7-9
https://www.sofinco.fr/files/live/sites/sofinco/files/images/Sofinscope/Etudes%20compl%c3%a8tes/opinionway-sofinco-les-francais-et-le-budget-voyage-avril-2025.pdf

バカンス予算は平均給与の約6割

バカンスに出かけるためには、費用のことも考える必要があります。一般的に出かける期間が長くなるにつれてバカンス費用も増える傾向もあり、今夏のバカンスでいくら予算を見積もっているかという回答を見てみました。回答者全体の平均額は1,598ユーロ、     約27万円でした。[注2]

円安下で日本円換算額が大きくなるのは否めませんが、フランス人の家計と比べても少ない金額ではありません。フランスの民間企業(正社員)の平均給与は月2,730ユーロ(2023年時点)、約46万円であるため、その約6割を夏のバカンスに充てる計算になります。

※1ユーロ=169円として換算

その他世帯区分ごとのバカンス予算もまとめました。

世帯区分ユーロ円換算額
(1ユーロ=169円として計算)
 全体1,598ユーロ27万72円
 夫婦世帯1,856ユーロ31万3,664円
 単身世帯1,068ユーロ18万492円
 月収3,500ユーロ以上世帯2,250ユーロ38万250円
 月収2,000ユーロ未満世帯917ユーロ15万4,973円

[注2]opinionway pour Sofinscope「Entre envies d’évasion et réalité du portefeuille : La fin des traditionnelles vacances d’été ?」p.11
https://www.sofinco.fr/files/live/sites/sofinco/files/images/Sofinscope/Etudes%20compl%c3%a8tes/opinionway-sofinco-les-francais-et-le-budget-voyage-avril-2025.pdf

バカンス費用は計画的に準備

900~2,000ユーロは、多くのフランス人にとって大きな金額です。「バカンスに出かけるために金銭的な努力をしている(73%)」「バカンスのために他の支出を削る(50%)」という人も多く、さまざまな工夫でバカンス費用を準備していることがうかがい知れます。[注3]

そこで、バカンス費用に関するフランス人の行動について確認してみたところ、以下のような回答が見られました。[注4]

  • 1位:旅行中の支出ごとの予算を設定しておく(60%)
  • 2位:旅行の予算を立てるために、現地の物価を調べる(48%)
  • 3位:毎月、旅行のための貯蓄をする(38%)

バカンスに向けて貯蓄に努めるというのは、ぜひ真似したいところですね。フランス人の貯蓄方法については「Vol.73|フランス人の資産形成―安全性か収益性か?それとも貯蓄などしない?」でも紹介しています。

[注3]opinionway pour Sofinscope「Entre envies d’évasion et réalité du portefeuille : La fin des traditionnelles vacances d’été ?」p.15
https://www.sofinco.fr/files/live/sites/sofinco/files/images/Sofinscope/Etudes%20compl%c3%a8tes/opinionway-sofinco-les-francais-et-le-budget-voyage-avril-2025.pdf

[注4]opinionway pour Sofinscope「Entre envies d’évasion et réalité du portefeuille : La fin des traditionnelles vacances d’été ?」p.17
https://www.sofinco.fr/files/live/sites/sofinco/files/images/Sofinscope/Etudes%20compl%c3%a8tes/opinionway-sofinco-les-francais-et-le-budget-voyage-avril-2025.pdf

コスパ旅行への取り組みも

この物価高の折では何らかの方法で旅行予算を抑えようとしている人も多いようです。フランス人が旅行費用を抑えるためにどのような方法をとっているのか、最も多かった回答トップ5をご紹介します。[注5]

順位費用を抑える方法回答割合(複数回答)
1位シーズンオフに行く50%
2位フランスよりも物価の安い国に行く28%
3位比較サイトを利用する26%
4位バカンス期間を短くする25%
5位余計な支出を避けるために、オールインクルーシブ(※)の滞在プランを利用する21%

(※)ホテル施設内の食事や飲み物、プール、アクティビティ料金など、ほぼすべての料金が含まれているプラン

これらのなかには日本人が国内・海外旅行に行く際に活用できる方法も多々ありそうですね。旅行計画の際に取り入れてみてはいかがでしょうか。

[注5]opinionway pour Sofinscope「Entre envies d’évasion et réalité du portefeuille : La fin des traditionnelles vacances d’été ?」p.18
https://www.sofinco.fr/files/live/sites/sofinco/files/images/Sofinscope/Etudes%20compl%c3%a8tes/opinionway-sofinco-les-francais-et-le-budget-voyage-avril-2025.pdf

まとめ

筆者はフランスで会社員をしていたことがありますが、入社して1年目の夏季休暇で会社から連続2週間以上の取得を強制され、驚いたことがあります。当時は今回紹介したような有給休暇に関する法律をまだ知らなかったのですが、「フランス人=バカンス好き」というイメージがインプットされたものです。

今回紹介した調査結果でも、フランス人の7割以上の人が金銭的な努力をし、2人に1人は他の支出を削るという結果に、筆者が抱いていたイメージは間違いではなかったと感じています。

しかし見方を変えると、バカンスを大切にするからこそ、物価を調べたり、毎月貯蓄をしたり、他の面で節約したりと費用準備に精力を注げるといえそうです。お金がない、物価が高いからとあきらめず、大切な目的のために資産形成に努めるフランス人の実行力を見習ってみましょう。

※本文は、著者の調査・経験に基づき一般的な内容を掲載したものです。また、各種制度、政策および投資環境については執筆時点のものであり、将来変更となる可能性がございます。資産運用においてはお客様ご自身の収入や貯蓄、生活スタイル等に基づいてご判断ください。

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コラム著者

續 恵美子氏 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)