2026年5月29日に改正健康保険法が成立し、出産の標準的費用(正常分娩に相当)について、妊婦の自己負担額がゼロとなる制度が創設されることになりました。現状では、2028年までの開始を目指すとされています。[注1] 

実は筆者が住むフランスでは、出産費用の無償化についてはかなり先に進んでおり、筆者自身も妊娠から出産まで、検査や分娩等にかかる費用をほとんど支払った経験がありません。

そこで、この記事では、フランスの出産費用について自己負担ゼロの仕組み、自己負担が発生するケース等、筆者自身の経験を含めて紹介します。 

[注1] 厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」 

ヨーロッパのなかでも出生率が高いフランス

冒頭で紹介した日本の出産の標準的費用の無償化は、少子化に歯止めをかけることが大きな目的の一つです。出生率の高低の理由は多様であるうえ、国によっても事情が異なる可能性がありますが、経済的な要因もあるということかもしれません。

なお、出産費用無償化の歴史が長いフランスでは、2025年の合計特殊出生率(※以後、出生率)が1.56で、日本の1.14と比べて高いことがわかります。

実はフランスでも、他の先進諸国同様、近年の出生率は低下傾向にあり、最も高い水準だったとされる2.02(2010年)と比べると、15年間で0.46低い状況です。それでもヨーロッパのなかでも出生率の高い国としてまだ高い出生率を維持していることは、国際的な調査データからもわかります。以下で、ヨーロッパのいくつかの国の出生率をまとめてみました。

国名出生率国名出生率
フランス1.6スウェーデン1.4
アイルランド1.6ベルギー1.4
イギリス1.5ノルウェー1.4
ドイツ1.5オーストリア1.3
ポルトガル1.5ギリシャ1.3
デンマーク1.5イタリア1.2
オランダ1.4スペイン1.2

出所:UNFPA(国連人口基金)「State of world population 2025(世界人口白書2025英語版)」を元に筆者作表 
なお、当調査データを見ると、近年少子化が問われている中国は1.0、韓国は0.8です。
※合計特殊出生率:1人の女性が一生の間に生む子どもの数のこと

フランスの妊娠~出産にかかるお金事情

ここで、フランスでの妊娠・出産にかかるお金事情を紹介しましょう。

フランスでは、妊娠期間中のさまざまな検査、出産(分娩)などの費用は基本的に社会保険で100%保障されます。検査は、いわゆる妊婦健診として定期的に行われる問診・診察・血液検査・超音波検査等のみならず、たとえば羊水検査や食事指導なども対象です。

ここで筆者の経験を少し紹介しましょう。筆者は年齢上、羊水検査(染色体検査)の受診を要されました。また、血糖値検査で指摘が入り、毎日の血糖値検査や栄養士による定期的なチェックおよび食事指導を受ける必要がありました。

さらには、いざ陣痛がはじまり、予定していた産婦人科に行ったところ、当日すでに複数の分娩予定者がおり、分娩室・新生児室ともに空きがないとのことで、他の公的病院に救急車で運ばれたのです。

その際、送り出した側の病院が届けたはずのこれまでの検査記録に漏れがあり、受け入れ病院で再検査を要されました。無事に出産を終えて運ばれた部屋は個室であり、一般的な入院期間は3日間であるところ、母子の状態から5日間の入院を指示されました。

筆者の件では、意図せずこの一連の運びとなった次第ですが、羊水検査や血糖値検査、食事指導、救急車や受け入れ病院での再検査、個室代等、すべて自己負担が不要で、そのたびにホッとしていたことを覚えています。

一方で、妊娠期間中にまったく医療費を払っていないわけではありません。フランスでは、医療機関や医師(婦人科医を含む)は社会保障金庫と協約の締結を選択できるようになっています。協約を結んでいない医療機関・医師は、基本的に自由に医療費を設定できるため、公的医療保険の対象となる医療行為でも自己負担が発生する場合があります。

筆者も妊娠中の検査で何度か地元病院にかかった際、担当としてお願いした医師が協約を結んでおらず、自己負担が発生したことがあります。これは後になって知ったことでした。
 

【参考】子ども1人あたり、妊娠~出産にかかる平均費用

ここまでお伝えしたとおり、フランスでは基本的に妊婦健診や分娩費用の自己負担はありません。一方で、これらの費用は公的医療保険が100%まかなってくれることになります。

筆者のように通常の場合よりも多く費用がかかるケースもありますが、一般的には、妊婦健診や分娩・出産後の入院などにかかる費用の総額は、大体5,500ユーロ(日本円で約100万円、1ユーロ=181円で計算)といわれています。なお、フランスでは無痛分娩のケースが多く、無痛分娩のための麻酔費用・技術料も含まれます。

日本の出産費用事情の改善に期待

日本では、現時点で出産費用に関する公的支援として、出産育児一時金が出生児1人につき50万円支給されます。しかし、出産費用の全国平均額は50.7万円(2023年時点)と出産育児一時金額より高い状況です。

日本でも出産費用の無償化が決定されたことは、子どもを持ちたいと思う人にとって喜ばしいことでしょう。また、妊婦の経済的負担が軽減することで、子どもを持つことの安心感を高められる人が増えることも期待したいものです。

とはいえ、お祝い膳やアメニティー等の任意的なサービスは無償化の対象とならず、従来どおり自己負担が必要となる見込みです。2028年までの無償化開始を目指して制度設計が進められている状況で、まだまだ不明な点もありますが、今後の動向を注視していきましょう。

新たな命を育てるための資金準備も必要(まとめ)

出産は多くの人にとって重要なライフイベントの一つであり、日本でも出産費用の無償化が進めば妊娠・出産の経済的な安心感が高まるでしょう。

それでも子どもが生まれると、ベビーグッズの購入、保育所、習い事等、さまざまな費用負担が発生します。「日本に比べてこんなに安い!フランスの教育費の平均額」でも紹介しましたが、子どもの出生にともない、さまざまな費用計画・資金準備が必要になるのはフランスでも同じです。

改正健康保険法の成立を機に、新たな命を育てる検討とともに、新たなライフプランやマネープランを作成し、子どもにかかるお金も育てることに取り組んでみてはいかがでしょうか。

  • 本資料は、情報提供を目的として作成した資料であり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではありません。
  • 本資料は、各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成されていますが、その正確性・完全性が保証されているものではありません。
  • 本資料の中で記載されている内容・数値・図表・意見・予測等は、本資料作成時点のものであり、将来の市場動向、運用成果を示唆・保証するものではなく、また今後予告なく変更されることがあります。
  • おかねの羅針盤®はアムンディ・ジャパンの登録商標です。

コラム著者

續 恵美子氏 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)