株価は常に変動します。長期的なスパンで見ると、日経平均株価は上昇傾向が続いています。「2025年10月27日に史上初の5万円台となった」のは、記憶に新しいところでしょう。 

しかし、株価下落はさまざまな要因で起こり得るため、過去の事例も参考にしながら、慎重な投資を心がけることが大切です。 

もちろん、本当に日本株が下落局面に入る日がくるのか、それがいつなのかは予測できません。株価下落時の主な原因を知り、対処の仕方を心得ておきましょう。

そもそも日本株の下落はなぜ起こる?その前兆は?

そもそも株価はその銘柄を買いたい人が増えれば上がり、売りたい人が増えれば下がる需給関係によって決まる仕組みです。そのため、売り注文が殺到し、買い注文が少ないといった状況で株価の下落が生じます。 
ではなぜ、一気に売りたい人が増えるのか。それは、以下のようなさまざまな要因が絡んでいます。
 

投資家の心理的な影響

投資家が売り注文を出す理由はさまざまです。例えば株価が上昇傾向にあるときに大きな利益を期待したり、逆にこのまま上がり続けることはないと不安になったりと、投資家の心理状態が乱れたときに、大量の売り注文が発生する可能性があります。

企業のネガティブなニュース

企業の不祥事など、予想外のネガティブなニュースが発表されたときには、投資家が該当銘柄や関連企業の銘柄を売却する傾向があります。したがって、収益性や将来性が悲観されると、株価の下落を引き起こす可能性があります。

金利・景気・災害・戦争などの外的要因

金利が上昇したり、景気後退が懸念されたりと、企業業績に影響を与える外部環境に変化が生じた場合に株価が下落することがあります。代表的な要因が、戦争など地政学上のリスク、大災害やパンデミックなどです。

為替相場の変動

為替相場の変動も株価下落が発生する要因の一つです。例えば、日経平均株価を構成する銘柄のなかには輸出企業が多く含まれますが、為替が「円高」に変動すると輸出企業の収益に悪影響が出ます。これらの輸出銘柄の値が下がり、つられて日経平均株価が下がるケースがあります。

日本株が大幅に下落したときにしてはいけないことと対処法は?

日本株が大幅に下落し、自分の資産が目減りすると、心理的には落ち着かないかもしれません。しかし、そのような場合に、「してはいけない」といわれている行動があります。 いざというときに冷静に対処できるよう、取ってはいけない行動や対処方法を押さえておきましょう。

取ってはいけない行動

日本株が急落した際に、以下のような行動を取るのは避けましょう。

  • 慌てて売却する(狼狽売り)

    株価が急落したときに、下落の原因などをよく分析することなく、慌てて売却することを「狼狽売り」といいます。 もちろん、「損切り」など、あらかじめ自分で決めておいたルールに基づいて売却するのは一つの方法です。しかし、周囲に影響されて慌てて売却するような場合は、株価が回復するタイミングを逃してしまうかもしれません。 損失を確定させることで、長期的な資産形成に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。

  • 積立投資を停止し、短期的な売買を繰り返す

    積立投資の場合は、株価の大幅下落を受けての積立を停止する、すでに積み上がった分を売却する、積立で購入した分をすぐに売却するといった対応はおすすめできません。 積立投資は、株価が変動しても長期的に継続することで、自然と平均購入単価を平準化できる方法です。株価が下がったときには、逆に多くの数量を購入できるというメリットがあります。 積立投資の場合、保有株数を積み増していき、価格が上昇したタイミングを見て売却すれば、利益を得やすくなるのです。下落時も慌てずに継続することによって、チャンスにつながるかもしれません。

対処方法

日本株が大幅に下落したときは、「なぜ今回の下落が起きたのか」などの情報を集めましょう。下落が一時的な問題なのか、本質的な問題なのかを分析し、以下のような対処をすることが大切です。

  • 目的にあわせて売却方針を検討する

    まずは、自分の当初の投資目的を再確認しましょう。目的によって、取るべき行動は異なります。 長期投資を前提としている場合は、しばらく動かず、株価の回復や成長を慎重に確認するとよいでしょう。値上がり利益を期待して投資している場合は、株価が下がったのを機に買い増しをするという手段もあります。ただし、さらなる下落リスクもあるため、資金管理には注意が必要です。 下落局面が長期化する可能性があるときは、売却も選択肢となります。将来的に現金化する必要があり、その時点よりもさらに価格が下がると思われる場合は、売却を検討するとよいかもしれません。

  • 配当の質と安定性を重視する

    下落局面であっても高い配当利回りを維持できそうな株を選定し、購入しておくのもおすすめです。安定的に配当を出している企業であれば、保有し続けることによって、配当金を継続的に受け取れる可能性があります。このような株は、下落したとしても、株価の回復を待ちやすいでしょう。 ただし、景気が悪化する局面で減配・無配に転じる企業もあります。直近の利回りだけでなく、配当性向や財務体質なども考慮し、配当の持続可能性を確認しておきましょう。

  • リスク分散の観点で投資する

    例えば、株式とは異なる性質の「金」(ゴールド)をポートフォリオに組み込むことで、全体のリスクを低減する分散効果(ヘッジ機能)が期待できるかもしれません。

株価は回復する?過去の事例の傾向

冷静な判断に役立てられるよう、過去の株価下落の事例も知っておくとよいでしょう。それぞれの事例によって回復までの期間は異なりますが、株価は回復に向かうことがわかります。

ブラックマンデー(1987年)

1987年10月19日(月曜日)にニューヨーク証券取引所で株価市場の大暴落が起こったことから「ブラックマンデー」と呼ばれました。この日、NYダウ平均株価は1日で22.6%下落しています。世界中に大きな影響を与えたブラックマンデーは日本株にも大きな影響を及ぼし、日経平均株価は約15%下落しました。 市場が下落した主な要因は、1985年のプラザ合意以降に進行した米ドル安継続や米国の貿易赤字拡大への懸念、インフレに対する警戒感、コンピューター・プログラム取引の普及による自動売買の連鎖反応などが重なったものと考えられています。 しかし、各国の中央銀行が協調して金融緩和するなど迅速な対応をしたため、比較的早期に回復しました。 また、この経験を基に導入されたのが、取引停止制度(サーキットブレーカー)です。この制度は、株価急落時に投資家の冷静な判断を促せるよう、一定以上の変動があった場合に取引を強制的に止めるものです。

バブル崩壊(1990年)

1980年代半ばから日本の株式市場は急速に上昇し、多くの企業や個人投資家の資金が株式市場や不動産市場に集まったのが、いわゆるバブル経済です。1989年の大納会(年最後の取引日)で、当時では史上最高値となる3万8,915円で取引を終了しています。 バブル経済は、プラザ合意後の円高により業績に大打撃を受けた輸出型企業を救済すべく、政府が大幅な金融緩和政策を実施したことから始まりました。市場金利が下がり、融資を受けやすくなった企業が、本業の投資よりも株式や不動産への投資で利益を得ようとしたのが、バブル経済のきっかけです。市場が活性化することによって、個人投資家も利益への期待を膨らませました。その結果、市場が加熱し、経済成長の実態のない株価上昇(バブル)となったのです。 一方で、バブル崩壊の要因となったのは、政府による金融引締め策や不動産融資総量規制などです。もともとはバブル経済の是正が目的でしたが市場の熱は急速に冷め、株価や不動産価格が低迷、日経平均株価は1992年8月18日に当時の下落局面での最安値となる1万4,309円をつけ、ピーク時から63%の下落となりました。 その後、政府が発表した経済対策への期待感もあり、翌年の1993年4月には2万円台に回復しました。

リーマンショック(2008年)

リーマンショックは、2008年9月15日、米国大手金融機関であるリーマン・ブラザーズが破綻し、連鎖的に発生した世界的な金融危機です。日本株も例にもれず影響を受けています。 金融緩和政策が続いていた米国でサブプライムローン(信用力の低い借り手向けの住宅ローン)利用者が増加、住宅価格の上昇と、住宅市場が活性化していく一方で、政策転換による米国政策金利の引き上げ、ローン返済不能者の急増による不良債権問題などが重なったのが破綻の主因です。破綻が発表された15日のNYダウ平均株価は、前週末比504ドル安の1万917ドルで取引を終了しました。 世界の株式市場も影響を受け、日経平均株価は10月27日にバブル崩壊後の最安値となる7,162円をつけました。その後も世界景気や企業業績への警戒感が高まり、翌年の2009年3月10日には7,054円で取引を終えています。 その後も企業の倒産や派遣切りなど経済的な混乱はしばらく続きましたが、各国政府による政策金利引き下げなどの対応により、経済が回復に向かいました。

東日本大震災(2011年)

2011年3月11日の大引け間近の14時46分、東日本大震災が発生した直後から売り注文が殺到、大引け間近だったこともあり日経平均株価は前日比179円安の1万254円で取引終了となりました。 その後、被害の状況が確認されるにつれ、株価は値下がりし続けました。週明けの14日には1万円台を割る9,620円、15日に東京証券取引所第1部上場銘柄の97%が値下がり、8,605円で取引を終了しています。前日比10.55%の下落で、当時では1987年のブラックマンデー、2008年のリーマンショック後に次ぐ過去3番目を記録しています。 その後も震災被害にともなう経済の減速が意識され、日経平均株価は9,000円前後で軟調に推移しましたが、第2次安倍晋三内閣が発足した2012年12月頃から株価も上昇基調に転換しました。

コロナショック(2020年)

2020年初頭から世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の株式市場が下落したのがコロナショックです。2019年末の日経平均株価は2万3,656円でしたが、2020年3月には1万6,000円台まで下落しました。 しかし、各国の大規模な金融緩和や財政政策により、株式市場は予想以上の早さで回復。特にリモートワークの普及などデジタル化の加速を追い風にIT関連企業の株価上昇が目立ちました。

過去の傾向から株価市場の下落は今後も一定数発生する可能性が高い

過去の事例を見ると、株価下落は経済の状況や各国政府の政策、自然災害などさまざまな要因で起こりうることがわかります。今後も一定数の株価の下落局面が発生する可能性を念頭に置き、投資をする際にはリスク分散に努めましょう。

なお、リーマンショックのように海外を起点とした下落局面であっても、日本株へも影響が出ます。しかし、日本は自然災害が多く、輸出型企業が多い国です。そのため、資産全体の安全性を考慮するのであれば、日本株のみに集中して投資をするよりも、世界全体の株式に投資したほうがよいかもしれません。

まとめ

日本株の下落は、いつ発生してもおかしくないリスクの一つです。株価下落時に慌てず冷静に対処できるように、投資をする際にはあらかじめ投資目的や損切りルールを明確に定めておきましょう。 

さまざまな投資対象に資産を分散して投資するようにしておくことも下落リスクへの対策となります。投資対象資産や投資対象国を分散できる投資信託を購入するのもおすすめです。 

※ 本文は、著者の調査・経験に基づき一般的な内容を掲載したものです。また、各種制度、政策および投資環境については執筆時点のものであり、将来変更となる可能性がございます。資産運用においてはお客様ご自身の収入や貯蓄、生活スタイル等に基づいてご判断ください。

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コラム著者

續 恵美子氏 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)