年末調整が近づいてくるこの時期、税金のことが気になってくる方は多いのではないでしょうか。大学生のお子さんがいる方は、お子さんのアルバイト収入に注意しないと、自分の税金が増えてしまうかもしれません。今回は、2025年度の変更点も含めて、大学生がアルバイトをする際に知っておきたい「扶養控除」について解説します。

大学生を養っている親は「特定扶養控除」が適用になる

本題に入る前に、まずは、会社員のケースで所得税の計算過程をおさらいしておきましょう。 

所得税を計算するときには、税込の年収に所得税の税率をかけて所得税を求めるわけではありません。以下の手順で所得税を算出します。 

  1. 税込年収から会社員にとっての必要経費とみなされる「給与所得控除」を差し引き、「給与所得」を算出します。
  2. 次に「給与所得」から本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情だけでなく、保険商品等の個別の契約状況によって、税の負担を軽くする制度である「所得控除」を差し引いて「課税所得」を算出します。
  3. 課税所得の金額に応じた所得税の税率を掛けて所得税を算出します。その後、住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、所得税から直接減税します。 

「所得控除」のひとつに、扶養者が受けられる「扶養控除」があります。通常、扶養控除では所得税の所得を38万円、住民税の所得を33万円控除できますが、19歳以上23歳未満の大学生年代の子(特定扶養親族)を扶養している扶養者は、「特定扶養控除」と言って、所得税の所得「63万円」、住民税の所得「45万円」を控除できます。 

大学などの学費は教育費の中でも高額なので、19歳以上23歳未満の大学生年代の子どもを養っている場合には、経済的な負担が大きくなります。そこで、通常の扶養控除よりも控除額を大きくすることで税金の負担を減らす配慮がなされています。

特定扶養控除が受けられないと親の税金はいくら増える?

2024年まで、扶養者が扶養控除を受けるには、大学生の子どもがアルバイトをする際、年収を103万円以下に抑える必要がありました。つまり、年収103万円を超えると、特定扶養控除は受けられませんでした。 

仮に大学生年代の子どもが年収103万円を1円でも超えた場合、親の税金はいくら増えるでしょうか? 

親の所得税10%(住民税は所得税率にかかわらず一律10%)の場合に増える親の税額は、単純計算で
・所得税 63万円×10%=6万3,000円 
・住民税 45万円×10%=4万5,000円 

所得税、住民税合わせて10万8,000円、親の税金が増えることになります。 

所得税の税率は所得によって5%から45%まで、段階的に上昇します。したがって、年収が高いほど、子どもが扶養から外れたときの税額が多くなってしまいます。特に大学生の場合は、扶養控除の金額も大きくなるため、扶養から外れた場合に増える税額も多くなることには注意が必要です。 なお、所得税の増加は年末調整で反映されるため、年末調整の還付金が減少するか、場合によっては追加徴収になります。住民税が増えるのは翌年の6月分からになります。

2025年の改正点は? 年収150万円までは税金、社会保険を気にせず働けるように

上記の税金増が、大学生の就業調整、さらには労働力不足につながっていると指摘されていました。 

そこで、2025年からは扶養控除を受けられる被扶養者の年収が123万円に引き上げられ、さらに大学生年代の子どもに対しては「特定親族特別控除」が適用されることになりました。 

特定親族特別控除では、大学生年代の子どもの年収が123万円を超えても、150万円以下であれば特定扶養控除と同じく所得税の所得を63万円、住民税の所得を45万円控除できるようになっています。 

また、大学生年代の子どもの年収が150万円を超えても一気に税金が増えることはありません。大学生年代の子どもの年収が150万円を超えても、年収が188万円になるまでは段階的に控除額が減るようになっています。これにより、親の手取りが急激に減らないようになっています。

図表 特定親族特別控除額
特定親族の合計所得金額
(収入が給与だけの場合の収入金額
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下(123万円超 150万円以下)63万円
85万円超 90万円以下(150万円超 155万円以下)61万円
90万円超 95万円以下(155万円超 160万円以下)51万円
95万円超 100万円以下(160万円超 165万円以下)41万円
100万円超 105万円以下(165万円超 170万円以下)31万円
105万円超 110万円以下(170万円超 175万円以下)21万円
110万円超 115万円以下(175万円超 180万円以下)11万円
115万円超 120万円以下(180万円超 185万円以下)6万円
120万円超 130万円以下(185万円超 188万円以下)3万円
※特定支出控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf
 

さらに、アルバイトと収入が年収130万円を超えると、通常は、アルバイト先の健康保険に加入するか、自身で国民健康保険に加入することになり、社会保険の扶養からは外れるのですが、2025年10月1日以降は、大学生年代の子どもは年収150万円まで社会保険の扶養に入れることになっています。

つまり、大学生年代の子どもは、年収150万円までは親の税金や自身の社会保険料のことを気にせずに働けるようになった、といえるでしょう。

学生、親双方にメリットが大きい改正に。税金の知識があるかないかでマネープランに影響も

今回の改正は、これまで見てきたように、大学生やその親には恩恵が大きい改正となっています。 

税金は理解しづらく、つい後回しにしたくなりますが、家計に大きな影響を与え、マネープランを考える上でも非常に重要です。 

今回の改正についても、理解している方としていない方で家計に大きな影響がでます。 

ぜひ、わかりやすい解説記事や書籍などを参考にしながら、税金の知識を身につけましょう。また、税制は世の中の事情に合わせて変更になることもあります。ニュースなどでも最新の情報をキャッチアップするようにしましょう。 
 

※本文は、著者の調査・経験に基づき一般的な内容を掲載したものです。また、各種制度、政策および投資環境については執筆時点のものであり、将来変更となる可能性がございます。資産運用においてはお客様ご自身の収入や貯蓄、生活スタイル等に基づいてご判断ください。

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コラム著者

高山 一恵氏 
ファイナンシャルプランナー(CFP®)